事業承継税制→究極の世代間ババ抜き?

事業承継税制について

ここ1ヶ月、理解を深めるべく、集中的にセミナーに参加してきました。自分なりに調べ、いろいろな角度から、講師の先生方のお話を聞き、事業承継税制について思ったことは、

問題の先送りに過ぎない

ということ。

もう、本当、超氷河期世代の自分としては、「またか・・・」と思わずを得ません。

事業承継税制とは?

 ざっくり申し上げれば、この事業承継税制とは、株式を贈与、相続するときに発生する税金を猶予するというもの。

 具体例で言えば、企業のオーナーが子に代替わりするので株を贈与したいけど、贈与税がかかるから贈与できない。

 そうするといつまで経っても経営の実権が子に移らず、企業としても代替わりが進まず大変になってしまう。この問題を解決するために設けられたのが、事業承継税制といわれるものです。

 具体的にはある条件下で一定の手続きをすれば、自社株を贈与(相続もあり)しても税金を猶予してあげるよーというものです。

事業承継税制の恐ろしさ

 この制度、自社株を贈与した時の贈与税は猶予してあげるけど、

 1 条件つき毎年報告してね。

 2 それを怠ったら、猶予した年数の利息込みで税金払ってね。

 と、さらっと規定があります。

(詳細は他の先生方が書いた記事はネット上にいくらでもあるので、検索していただければ幸いです。)

 この「猶予」というワードが大事で、あくまで納税を待ってあげるだけの制度なんです。

 免除ではないんです。いつか納めなけなければならないんです。

 いつか納めるのは誰か?子かもしれないし、孫かもしれないです。

 

先送り先送りして、その先はどうなるか?

 決まっていません。

 法律で決めていないんです。

 だから、とりあえず、制度使ってこの贈与税爆弾を炸裂させないように次の世代、次の世代へパスしていこうぜ☆!!!

 となります。

 なんかどこかで聞いたような話ですね。

世代間ババ抜き

 しかも、この猶予制度、贈与や相続の手続きをして終わりではありません。

 何年にもわたり、報告義務があるんです。

 しかも一度でも忘れたり、報告期限を破ると、その時点で全額納付+それまでの利息付で納付を迫られるという恐ろしいペナルティ付き。

 もう、究極の世代間ババ抜きです。

 そのときこの税金を負担するのは誰か?

 先代の社長ではありません。後の世代なんです。

 後の世代の方々、先代から従業員、営業先、銀行込みで社長を引き継いだとして、初年度から順風満帆にキャッシュいっぱいで、やっていてくれていると思いますか?

 そのときに報告をうっかり忘れて税金の督促が来たら、会社はどうなると思いますか?後の世代はどうなると思いますか?

 いつか猶予が切れた時のためにといって、納税資金残しておけますか?

 現に消費税だって預り金なのに、がんがん運転資金に回している企業なんて、ザラです。

 それよりもはるかに高額の贈与税を、引き継ぎに四苦八苦している後の世代がわざわざ別口座設けて手つかずで残すと思いますか?

 猶予制度を使うにあたり、現経営者様はよーく、きちんと考えてあげて欲しいです。

 

 会社を残すのは誰のためか?

 

 あなたが守ろうとしたのは何だったのか?

 

ビジネスチャンス!

 聞いたお話では、認定支援機関だから大丈夫!お任せを!という体でコンサルタントの方や担当者さんが営業にいらっしゃるそうです。先代の不安を煽り、後継者が別会社を作って上手に移転するスキームを提案し、これで贈与税を払う必要がありませんぜ!社長!(正確には、「今は贈与税を払う必要がありませんぜ!」)として、これに乗った先代様から手数料数十万円~数百万円いただくというもの。(そもそも2年目、本当に本体会社から別会社に配当払えるのかしら?)

 コンサルの方々はこのリスク、本当にわかっているのでしょうか?

(も、勿論、ちゃんとわかって責任を持ってやっている方もいるとは思いますよ?!)

 繰り返し言いますが、一度でもポカすると全額納付+それまでの利息付で次世代の人間が納付を迫られるんです。

 一回手続きして上手くいった!ハイ終わり!ではないんです。

 その後、何年間も、経営状況を見守り、国や県に報告をし続けなければならないんです。

 彼らは本当にやってくれるんでしょうか?

 先代様の影響力が薄れても本当にやってくれるんでしょうか?

 ずっと最後までつきあってくれるんでしょうか?

 

 繰り返しになりますが、いつか後の世代が負担することになるんです。

 先代様は後の世代から「負の遺産を遺した」と、泉下でも言われたいですか?

で、どうする?

 この制度を使わなくても、上手に経営移転する方法はありますし、これまで続いてきた数多の日本全国の企業は、ちゃんと株式贈与による納税という試練は乗り越えてきたんです。

 猶予というトリッキーな手を使わなくても、正面から後継者の育成に取り組み、きっちり自分の世代の精算は行い、後継者に引き継いできたんです。

 他の人が出来て、あなたに出来ないなんてことはない。

 あなたは何年、何十年にも渡り会社を支え続けてきた、歴戦の将。

 どうか、今流行りのスキームに踊らされることなく、納税資金まで考えてあげて、自分の世代のけじめは自分の世代でつけていただければと思います。

 そこまで先代様が考えていただければ、後の世代は安心して歩いていけるのではないでしょうか?

 道は一つではないはずです。できるだけ早めに、信頼できる税理士さんや会計士さんを見つけて、相談なさってください。もっと良い方法を提案してくれると思いますし、本当にこの制度を使うときも、後の世代まできっちり面倒を見てくれると思います。(別に私でなくても結構です。願わくば、皆様が良い先生と出会えることを祈ります。)